タイ税務アップデート2021年6月

税金還付申請に伴う困難

タイにおいて事業を行う法人は、様々な税務要件に準拠する必要があります。タイの税金は国税と地方税に分けられ、国税はさらに直接税と間接税に分類されます。法人税は直接税のひとつで、タイで事業を行う法人及びパートナーシップ、またはタイで特定の所得を得ている外国法人に課せられます。法人は源泉税ならびに仕入VATの納付超過分につき、還付請求の権利が与えられていますが、還付の前には税務当局により広範かつ詳細な税務調査が行われます。

税務調査に要する時間と費用を低減するためには、日頃から税法に則った処理と証憑管理が必須となります。これを怠ると、税務調査の結果、還付とは逆の加算税、延滞税を課せられる結果を招く可能性があります。

そのため、還付請求前には、最低限以下の書類を揃えておき、タックス・ヘルスチェックを受けておくことが望まれます。

  • 適切なタックスインボイスタックスインボイスの記載事項については、歳入局により最低限の要件が定められています。記載内容に不備のあるタックスインボイスによる仕入税額控除は認められないため、自社発行のタックスインボイス、他社から受領するタックスインボイスともに要件に沿った記載内容でなければなりません。
  • 照合のための根拠資料法人税・VAT計算に関する計算資料や証憑を客観的に照合できるように揃えておく必要があります。内容不明な不一致項目については税務調査が行われるため、事由を明らかにしておくことが大切です。
  • 源泉徴収票源泉徴収票の写し原本は保管し、税務当局の要請があれば提示しなければなりません。さらに、源泉徴収票の様式についても歳入局の定める様式に従う必要があります。さもないと、源泉税還付請求が否認されてしまいます。
  • 移転価格文書タイにおける移転価格税制は、最近補足されました。関連者との取引を行う法人は、移転価格文書を揃えておく必要があります。移転価格文書は、関連者間取引を網羅的に纏め・説明するものであり、関連者間取引の際の重要な補助資料にもなります。
  • マネジメントフィー関係会社からのサービスに対する支払い、とりわけマネジメント・サービスについては、歳入局長通達400号で示される条件を満たす必要があります。実際に受けたサービスに対しての支払いであるか、また、経済的ないし取引上の便益を得ていることが条件となります。また、サービス対価が独立企業間価格でなければなりません。
  • 関係会社間ローン関係会社間ローンについては、市場レートに基づく利率を設定する必要があります。また、タイ法人が借手の場合には、利息支払いに時に源泉税を徴収する必要があります。
  • 印紙税歳入法下での特定の契約書に対する印紙税は、些細な金額と捉えられがちです。しかし、税務調査では、サービス契約或いはマネジメント契約等に印紙税が支払われているかがチェックされます。納付漏れの場合は、印紙税額の最大6倍の加算税が課せられます。

BDO の視点: 還付可能な税金額は、事業の運転資金に大きく影響します。しかし、税金還付請求には時間、労力そしてコストも要します。税務調査の結果、還付されるはずが、逆に追徴を命じられるリスクが存在します。税金還付申請の前に、タックス・ヘルスチェックを受けることで、追徴リスクを低減し、運転資本計画をより効率的に進められるでしょう。

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